真昼の月

そんな私は平成生まれ

2017.4.8〜6.4「小湊鐵道100歳企画 かこさとし展」市原湖畔美術館

市原湖畔美術館(千葉県市原市)で、かこさとしさんの原画展が開催中です。2014年が初開催の「いちはらアート×ミックス」というトリエンナーレは、今年が2回目の開催(5月14日で会期終了)。2011年に市原湖畔美術館の存在を知って以来、訪問のチャンスを窺っていて、抱き合わせで今回初訪問となりました。

 

はるばる電車を乗り継いでたどり着いたJR内房線五井駅小湊鐵道というローカル線へ乗り継ぐところ、大きな列車を描いたパネルが展示されていた。友だちが「かこさとし」さんのお名前を口に出しても私にはピンと来ない。スマートフォンで検索してみると一発でわかった。

 

「だるまちゃんとかみなりちゃん」の人だった!

 

たぶん、代表作としてより有名なのは「だるまちゃんとてんぐちゃん」だけど、私が子どものころ繰り返し読んだのは「かみなりちゃん」の方なのです。

 

原画はかこさんの絵本作品から各数点ずつと、「出発進行!里山トロッコ列車」の全画面が展示されていました。加えて、書籍「未来のだるまちゃんへ」からの言葉が引用・展示されています。「だるまちゃんとかみなりちゃん」が大好きすぎて、小学校に上がっても中学校に上がっても読み続けた記憶が一瞬でよみがえり、興奮が止まらない。かこさん、素晴らしいです。教科書としてこれ以上のものはないんじゃないかと思いました。ミュージアムショップでは、絵本「里山トロッコ列車」と、文庫「未来のだるまちゃんへ」、それからかわいいシールをひとつ買いました。

 

 

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◆「未来のだるまちゃんへ」

 

 敗戦のとき、僕は十九歳でした。

 僕は「終戦」と言わないで「敗戦」と言うのですが、それは戦争に負けて、てのひらを返すように態度を変えた大人たちを見て、ものすごく失望憤激したからです。

 その時その時の状況にうかうかと便乗して、戦意高揚を謳ったかと思えば、反省のひと言もなく、今度は民主主義の時代が来たとしゃあしゃあと喜んでいる。

 

 大人はもう信用できない、飽き飽きだ。自分もその一員だった。大人ではなく、せめて子どもたちのためにお役に立てないだろうか。せめて自分のような後悔をしない人生を送るよう、伝えておきたい。

 

 こうして昭和二十年から僕の人生がやっと始まったのだと思います。

 子どもたちは僕にとっての生きる希望となりました。 

 

「はじめに」からの引用です。本当は全文載せたいくらい、かこさんがご自身の人生を凝縮して語っている部分です。人間というもの、特に日本人のメンタリティをこのうえなく的確に言い表している冒頭の文には鳥肌が立ちました。

 

 

未来のだるまちゃんへ (文春文庫)

未来のだるまちゃんへ (文春文庫)

 

 

 

「第三章 大切なことは、すべて子どもたちに教わった」「第四章 人間対人間の勝負」ここには教育のヒントというか、むしろ答えが書かれていると思えるくらい、かこさんの実感のこもった考え方を読み手が受け継ぐことのできる部分です。また、なぜ「だるまちゃん」か、というのもたいへん興味深い。だるまのキャラクターはどんなふうにして生まれたか、ぜひ読んでほしいと思います。日本の大人たちのメンタリティを痛烈に批判する一方で、日本の文化やその特徴を的確にキャッチするバランス感覚は、さすがといったところです。

 

かこさんは、47歳までサラリーマンと絵本作家の二足のわらじを履いていたそうです。自分の責任において、会社以外のことをやってもいいじゃん。というのは勇気づけられます。といっても、自分はせいぜい左足にサラリーマン、右足にはそれ以外の趣味、くらいなものだけど、いつでも脱いでしまおうくらいの余裕は(余裕だけは)もっていたいな。

 

 

だるまちゃんとかみなりちゃん (こどものとも絵本)

だるまちゃんとかみなりちゃん (こどものとも絵本)

 

 

 

出発進行!  里山トロッコ列車 小湊鐵道沿線の旅

出発進行! 里山トロッコ列車 小湊鐵道沿線の旅