真昼の月

そんな私は平成生まれ

原宿で買い物をした話

ある日、仕事が早めに終わったので、服を買いに行くことにした。パーティー用のワンピースがほしいと思っていた私が向かったのはどこだと思いますか?

 

ラフォーレ原宿です。

 

おしゃれな若者と、制服を着た中学生と、観光客が入り混じる街、原宿。のことが、私はとても苦手だ。実際どれだけの人が真におしゃれなのか、確かめて歩くほど、自分に自信があるわけではない。自信もなにも、そもそもがだいぶ無頓着。そんな自分が浮いているという自意識のせいで、居心地が悪い。だから、あのあたりは、苦手だ。しかも炎天下を歩いていて汗をかいているし、仕事先がタバコ臭かったせいで、自分までタバコ臭いときている。これでは店員さんも試着を嫌がるだろうな、このまま帰ってシャワーを浴びるべきかな、と考えながらも、ラフォーレ原宿についてしまったのだから、仕方がない。

 

目当てのお店は入口を入って正面だった。かわいすぎるほどかわいい服がところせましと並んでいる。私は慣れているふりをして、ワンピースが揃っているコーナーへと足を運び、手早く選ぶと、タバコのにおいを気にしながら、店員さんに試着させてもらえるようお願いした。

 

  

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隣からは、若い女子たちのキャッキャする声が聞こえる。私は鏡を見て、汗で崩れたメイクにギョッとして目の下をおさえつつ、かわいすぎるほどかわいいワンピースに着替える。サイズは丁度だった。最近太り気味だから、ネットで買うのは絶対にやめようと思っていたので、それだけでもここまできた甲斐があるというものだ。店員さんと雑談しながら、私はグリーンのワンピースを買うことにした。買おうと決めてきたから、自分にしっくりきさえすれば迷うこともない。しかもこの店員さん、とても気持ちがよかったので、すがすがしい気分でお店を後にすることができた。

 

私はLily Brownの紙袋を提げて、入ってきた入口から外へ出ると、入ってきた方とは逆の方向に歩き出した。えーっと、表参道はどっちですか。表参道駅から帰りたいんです・・・そう、何を隠そう私は生粋の方向音痴なのだ。しかも、この辺りできょろきょろしたりスマホを取り出し立ち止まろうものなら、完全にお上りさん認定を受けるではないか。という、またもや自意識との闘いが始まる。「竹下口」という信号が目に入り、やっと現在地がわかった。仕方がないから竹下通りを抜けて原宿駅へ向かうことにした。

 

竹下通りを歩くなんて、いったいいつぶりだろう。小学生か?中学生か?とにかく思い出せないほど昔だ。早く駅に着きたいのに、平日の午後5時前とはいえ、そこそこ混んでいて思うようなスピードで歩けない。そして、中学生と外国人観光客が9割を占めるこの通りに、すぐ引き返せばよかったと思うくらい居たたまれない気持ちになりながら、やっとのことで抜け出した先に、観光客のカメラが見えた。きっと何人ものカメラに、疲れ切った私の姿が写り込んでいることだろう。

 

さあ、山手線である。私は山手線が苦手だ。山手線は、若者や中学生がたくさん乗っているので、同じ目的地に行くときでも地下鉄を選びたい。それなのに、自意識のせいで、苦手な山手線に乗るはめになってしまった。この記事のタイトルは「原宿で買い物をした話」だけど、主題は何かもうおわかりですね?

 

そう、私はとても自意識が過剰だ、ということです。

 

そして、この自意識過剰は生活を困難にしているものではあるけれど、私というキャラクターを形作っているものでもあるのです。そんな私が書くブログです。どうぞよろしくお願いします。

2017.4.8〜6.4「小湊鐵道100歳企画 かこさとし展」市原湖畔美術館

市原湖畔美術館(千葉県市原市)で、かこさとしさんの原画展が開催中です。2014年が初開催の「いちはらアート×ミックス」というトリエンナーレは、今年が2回目の開催(5月14日で会期終了)。2011年に市原湖畔美術館の存在を知って以来、訪問のチャンスを窺っていて、抱き合わせで今回初訪問となりました。

 

はるばる電車を乗り継いでたどり着いたJR内房線五井駅小湊鐵道というローカル線へ乗り継ぐところ、大きな列車を描いたパネルが展示されていた。友だちが「かこさとし」さんのお名前を口に出しても私にはピンと来ない。スマートフォンで検索してみると一発でわかった。

 

「だるまちゃんとかみなりちゃん」の人だった!

 

たぶん、代表作としてより有名なのは「だるまちゃんとてんぐちゃん」だけど、私が子どものころ繰り返し読んだのは「かみなりちゃん」の方なのです。

 

原画はかこさんの絵本作品から各数点ずつと、「出発進行!里山トロッコ列車」の全画面が展示されていました。加えて、書籍「未来のだるまちゃんへ」からの言葉が引用・展示されています。「だるまちゃんとかみなりちゃん」が大好きすぎて、小学校に上がっても中学校に上がっても読み続けた記憶が一瞬でよみがえり、興奮が止まらない。かこさん、素晴らしいです。教科書としてこれ以上のものはないんじゃないかと思いました。ミュージアムショップでは、絵本「里山トロッコ列車」と、文庫「未来のだるまちゃんへ」、それからかわいいシールをひとつ買いました。

 

 

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◆「未来のだるまちゃんへ」

 

 敗戦のとき、僕は十九歳でした。

 僕は「終戦」と言わないで「敗戦」と言うのですが、それは戦争に負けて、てのひらを返すように態度を変えた大人たちを見て、ものすごく失望憤激したからです。

 その時その時の状況にうかうかと便乗して、戦意高揚を謳ったかと思えば、反省のひと言もなく、今度は民主主義の時代が来たとしゃあしゃあと喜んでいる。

 

 大人はもう信用できない、飽き飽きだ。自分もその一員だった。大人ではなく、せめて子どもたちのためにお役に立てないだろうか。せめて自分のような後悔をしない人生を送るよう、伝えておきたい。

 

 こうして昭和二十年から僕の人生がやっと始まったのだと思います。

 子どもたちは僕にとっての生きる希望となりました。 

 

「はじめに」からの引用です。本当は全文載せたいくらい、かこさんがご自身の人生を凝縮して語っている部分です。人間というもの、特に日本人のメンタリティをこのうえなく的確に言い表している冒頭の文には鳥肌が立ちました。

 

 

未来のだるまちゃんへ (文春文庫)

未来のだるまちゃんへ (文春文庫)

 

 

 

「第三章 大切なことは、すべて子どもたちに教わった」「第四章 人間対人間の勝負」ここには教育のヒントというか、むしろ答えが書かれていると思えるくらい、かこさんの実感のこもった考え方を読み手が受け継ぐことのできる部分です。また、なぜ「だるまちゃん」か、というのもたいへん興味深い。だるまのキャラクターはどんなふうにして生まれたか、ぜひ読んでほしいと思います。日本の大人たちのメンタリティを痛烈に批判する一方で、日本の文化やその特徴を的確にキャッチするバランス感覚は、さすがといったところです。

 

かこさんは、47歳までサラリーマンと絵本作家の二足のわらじを履いていたそうです。自分の責任において、会社以外のことをやってもいいじゃん。というのは勇気づけられます。といっても、自分はせいぜい左足にサラリーマン、右足にはそれ以外の趣味、くらいなものだけど、いつでも脱いでしまおうくらいの余裕は(余裕だけは)もっていたいな。

 

 

だるまちゃんとかみなりちゃん (こどものとも絵本)

だるまちゃんとかみなりちゃん (こどものとも絵本)

 

 

 

出発進行!  里山トロッコ列車 小湊鐵道沿線の旅

出発進行! 里山トロッコ列車 小湊鐵道沿線の旅

 

 

cocoon マームとジプシー

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スタッフ
原作/今日マチ子cocoon」(秋田書店) 
演出/藤田貴大
音楽/原田郁子


出演
青柳いづみ  菊池明明  青葉市子  小川沙希  花衣
川崎ゆり子  小泉まき  西原ひよ  高田静流  中嶋祥子
難波有  長谷川洋子  伴朱音  吉田聡子  コロスケ
石井亮介  尾野島慎太朗  中島広隆  波佐谷聡
飴屋法水

 
2015年7月11日
東京芸術劇場



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 この漫画と芝居のおかげで私は沖縄に心を縛り付けられている